プロフィール

ポラリスデイサービスセンター伽羅橋所長 兼 エリアリーダー
藤原 由香理


高石市との自立支援介護を活用した介護度改善プロジェクト

ポラリスデイサービスセンター伽羅橋では、大阪府高石市とともに、自立支援介護を活用した介護度改善をはかる3年間のプロジェクトに取り組んでいます。

高石市は健康増進の取り組みに力を入れている地方自治体で、積極的にイベントやキャンペーンを開催されています。
今回のプロジェクトは、高石市長がポラリスの自立支援介護の取り組みに共感してくださったことからスタートしました。

高石市での主な取り組み

  • ポラリスデイサービスセンター伽羅橋を開設
  • 介護給付費の削減効果を検証(年1回の介護度認定調査時の改善度から集計)
  • 市内事業者と交流をはかりながら、自立支援ノウハウの勉強会を実施


プロジェクト開始から1年を経た現在の結果は、要支援の方で約20%の方、要介護の方で約50%の方、全体で約40%の方の介護度が改善されました。
改善度に個人差がある中でこのような数字を出せたのは、画期的なことだと思います。
さらに今年は、4名のご利用者様が介護保険を卒業されました!

また、ポラリスデイサービスセンター伽羅橋でかかる年間の介護給付施策向けの想定費用を算出して、高石市全体にあてはめて算出すると、年間で14.3億円の削減になるという結果が出ました。

最終的な目標は、高石市の行政、市内の事業者様、ケアマネージャーさん、そしてポラリスのみんなで自立支援介護を実践することです。
高石市の皆様とともに、介護度の重度化防止や介護給付費の削減など、それぞれの立場をこえた共通の目標を共有しながら「自立支援介護を取り入れることが解決する一つの手段である」と理解していただけるように日々奮闘しています。

プロジェクト2年目の今年は、引き続き自立支援介護を提供しながら、市内のケアマネージャーさんに自立支援介護を知っていただき、提案の選択肢に入れていただくことを目指しています。
さらに、大学との共同研究によってご利用者様の生活のデータを計測し、自立支援介護が役に立つことを数字で実証していきます。

私自身、高石市で10年以上暮らしている高石市民です。
子育てをしている中でも感じるのですが、高石市は人と人の距離が近く、私にとっても大好きな町です。
「高石市にもポラリスのデイサービスができたら、みなさんを元気にして差し上げられるのにな」と思っていたところにデイサービスセンター伽羅橋の立ち上げの話が舞い込み、携わることができて嬉しい気持ちでいっぱいです!

【大阪府高石市と共同、社会保障費軽減への取り組み】
ポラリスでは、2021年12月1日より大阪府高石市と高石市健幸のまちづくり協議会と協力し、自立支援介護を活用した介護度改善と介護給付費抑制をはかる3年間のプロジェクトを行っています。 高齢化により医療や介護などの社会保障費が国や自治体の財政を圧迫している中、ポラリスは高石市健幸のまちづくり協議会と連携し、自立支援介護を通じて介護給付費削減の取り組みに至りました。

関連サイト| ポラリス、大阪府高石市と共同、社会保障費軽減への取り組み第1弾を開始 | 株式会社ポラリスのプレスリリース

 

自立支援介護の取り組みに共感しポラリスに転職

私がポラリスを知ったきっかけは、デイサービスではなくシングルマザーの支援プロジェクトです。
ポラリス本社に母親と子どもの住居を設置し、デイサービスで働きながら介護のスキルをつけてもらう取り組みを知って、興味を持ちました。
私自身がシングルマザーかつ介護職で生計を立ててきたので、当事者の立場からサポートできることがあると思ったんです。

ポラリスのことを知っていくうちに、自立支援介護の取り組みを知りました。
前職でも介護の仕事をしていましたが、介護士としてできることは、お食事や排泄、入浴、レクリエーションなどの生活のお世話や心のケアの部分だと思っていました。
自立支援介護では、「介護士の立場でも、ご利用者様のお体を元気にできる方法があるんだ」と目からウロコが落ちましたね。
「私も自立支援介護にチャレンジしてみたい!」と思い、ポラリスへの入社を決意しました。

ポラリス入社後は、前職のリハビリ系デイサービスとのギャップにひたすら驚きましたよ。
自立支援介護のデイサービスは、今まで働いていたデイサービスのような和気あいあいとした雰囲気ではなく、みなさん真剣にリハビリをされていました。
ポラリスの介護職は、一見トレーニングジムのように穏やかにリハビリをしているように見えるのですが、ご利用者様お一人おひとりのことを深く知って、それぞれに合わせた声かけやサポートをする熱のある仕事だなと感じました。

自立支援介護は、知れば知るほど深いものがありますね。
自立支援介護には正解がないので難しいと感じることもありましたが、実践の中でお一人おひとりのご利用者様に向き合い「この方にはどのようなアプローチが必要だろう?」と考え続けるなかで、少しずつ学んでいきました。

学会発表と高石市での成果報告会

今までチャレンジしてきた経験がすべて現在に活きている

ポラリスに入社するまでに、接客販売や葬儀社などさまざまな仕事を経験しました。
子どもの入院をきっかけに医療関係の仕事を目指し、縁があって介護の仕事に出会いました。

前職では、リハビリ系のデイサービスを運営する医療法人に8年間勤めていました。
前職の医療法人でも管理職としてやりがいを持って働いていましたが、介護職としてさらに知識をつけ、スキルアップしたい気持ちが強くありました。

介護の仕事は、ご利用者様とのコミュニケーションを楽しめるところが自分にとても向いていると思っています。
介護施設には、さまざまな人生経験をされたご利用者様がいらっしゃいます。
介護士として普通に生活していたら聞けないようなお話を聞けたり、ご利用者様が私たちを必要としてくださったりするところに日々やりがいを感じています。
ご利用者様の中には、「藤原さんとでないとお風呂に入りたくない」と言ってくださる方もいらっしゃいましたね。
前職では、レクリエーションやお誕生日会をしたり、いかにご利用者様に楽しんでいただくかを考えていました。

私の性格として、目の前の人に対して「何がベストだろう?」と考えるクセがあります。
自分の行動がきっかけで相手が喜んでくれるのも好きですし、人と会ってよいものができたり改善したりするコーディネートの仕事が好きなんです。

現在は伽羅橋の所長をさせていただいていますが、おかげさまで、管理職も自分に合っていると思っています。
社内外のたくさんの方に助けていただき、ご利用者様を元気にするという目標に向かって頑張っています。
大好きな高石市で、できるだけ結果を出したいと燃えているところです。

過去にさまざまなことにチャレンジしてきましたが、それが今、いろいろなところで点と点がつながっていくのが面白いと感じます。
前職の知人や地元の友人など人と人がつながったり、声をかけていただいて夏祭りの盆踊りで歌ったり、施設の慰問や誕生日会に参加したりすることもあります。
今までの経験のすべてが自分の役に立っているので、どんなこともチャレンジしてよかったなと実感していますね。

住まい×介護×医療展、シングルマザー×介護職として登壇したときのもの

盆踊りで歌う藤原さん

ご利用者様の不安な気持ちに寄り添い続ける

ここでは、ポラリスデイサービスセンター伽羅橋で担当させていただいているご利用者様の赤沢様のエピソードとインタビューをご紹介させていただきます。

赤沢様は、脳梗塞ののちに骨折をされて、退院後にポラリスにご来所されました。
赤沢様は、歩けるようになりたいという気持ちが強く、ご来所当初から「やってみる!」と積極的にチャレンジされる方でした。
努力家で、決めたことをきちんとやり遂げる赤沢様を、私も尊敬しています。
赤沢様の前向きな気持ちを大切にしながら、体と心に無理がかからないようにフォローさせていただきました。

ポジティブな赤沢様も、脳梗塞の後遺症である麻痺が出ており、歩けない恐怖感やプレッシャーを感じていらっしゃいました。
そこで、いったん速さを抑えながら、Pウォークで歩き方のトレーニングを重ねました。
麻痺している部分も同じように使えるようにするために、あえて合わせていただいたんですね。
ご本人様にとってはきれいに歩けるかも気になるところですが、まずは疲れにくく歩けるようになることを意識しました。

持ち前の努力が実り、赤沢様はみるみるうちに回復し、「同級生に会いになんばに行く」という目標を立てられました。
当日に備えて、担当のケアマネージャーさん、訪問リハビリのスタッフの方と一緒に駅まで一緒に行ってデモンストレーションを行いました。
そして、無事に同級生とランチしたり大好きな肉まんを買ったりして、笑顔でお帰りになられました。

2022年11月に入所された赤沢様は、今年の9月末には要介護1から要支援2に劇的に改善されました。
現在はポラリスに週2回通所しながら、外出の機会を増やすために製本の作業所にも週3回通われています。

要介護から要支援に改善されると、受けられるサポートが減って不安に思われる方も多くいらっしゃいます。
要介護度改善はすばらしいことですが、ご本人様としては不安や寂しい気持ちもあります。
スタッフとしては、常にご利用者様の不安に寄り添い、根拠を示しながら「大丈夫ですよ」と伝え、自立支援介護の本来の目的である「元気になること」を心から喜んでいただけることが重要だと思っています。

ポラリスデイサービスセンター伽羅橋のご利用者様 赤沢様より

私にとって藤原さんは、孫のように可愛い存在です。
私の不安に親身に寄り添ってくれて、ときには厳しい言葉もかけてくれるのでとてもありがたいです。
藤原さんをはじめ、ポラリスのスタッフのみなさん、ケアマネージャーさんのおかげで元気になれました。とても感謝しています!

元々、一人で生活できるようになりたい気持ちが強かったのでポラリスを選びました。
ポラリスで歩行訓練や生活面のアドバイスをもらうようになってから、体調がよくなっていくのを実感しています。
歩行の安定性もよくなり、以前は風が吹いたら転びそうで怖かったのも改善されました。

私は美味しいものや甘いものを食べることが趣味なので、友人とのごはんやお出かけを目標に頑張っています。
以前は電車にも乗っていませんでしたが、今では駅員さんに聞いたり、どこの駅で乗り換えるかを調べたりして、積極的に行動できています。
ポラリスには現在週2回通っていますが、本当はもっと来たいくらい大好きな場所です。

モチベーションアップは信頼関係を築くことから始まる

ご利用者様の中には、最初から高いモチベーションを持てない方も多くいらっしゃいます。

「家族に迷惑をかけたくないから」とご自分に自信をなくした状態で来られる方もいらっしゃいます。
また、漠然と「歩けるようになりたい」と思っていても、すぐに「さあ、頑張るぞ!」とはなりにくいですよね。

モチベーションを上げるためには、体調のベースを整えることも重要です。
ご高齢の方は、水分・食事・栄養が損なわれているとしんどい状態になりやすいといわれています。
さらに、ご本人様もご家族も「体の不調は年齢のせい」と思っていて、気付いていないことがほとんどなんです。
それでも、こまめな水分補給などのシンプルな方法を知って実践するだけでも体がよくなる効果を期待できます。

体調改善の効果を実感していただくことが、私たちへの信頼とご自身のモチベーションにつながります。
歩行距離もトイレの回数も数字で示して、「なんとなくじゃない。確かにできるようになった!」と実感していただくことが大切です。
少しずつ健康になっていくと体の反応がよくなって、目の動きも変わっていきます。
そこで初めて、目標に向かって頑張ろうというモチベーションが湧いてくるのです。
結果が出るとご利用者様も納得して、自発的に動いてくださるようになります。

また、ご利用者様と一緒に「具体的に何をしたいか」を一緒に深掘りする時も私たちスタッフの出番です。

ポラリスでは、ご本人様が安全に生活できることを第一に考えたうえで、ワクワクする目標を数字や場所まで決めていきます。
私たちもそうだと思いますが、ご利用者にも「これから何をしたいですか?」「どうなりたいですか?」とご自身のことを直球に聞いてもなかなか答えが返ってこないんですよね。
ご利用者様とのコミュニケーションで大切なのは、相手に対してどれだけ理解を示して、心の奥底にある願望や気持ちを引き出すかということです。

ポラリスでは、運動はもちろん、水分補給やお食事、運動、排泄などの生活の課題を全部洗い出して一つ一つ改善をはかります。
現場では、時にはデリケートなことを伝えたり、ご本人様が億劫だと思われていることを促さなければいけないこともあります。
たとえば、ご利用者様の中には水分補給に対して「トイレに何回も行くのはしんどい」「足むくむのがイヤ」と難色を示される方もいらっしゃいますね。
そのような時は、ご利用者様の気持ちに寄り添いながらご家族様を巻き込んでお話をしたり、日常の会話やヒアリングの中でも根拠とともに伝えたりしています。

日々ご利用者様との信頼関係を築きながら、「やってみようかな」「○○さん(スタッフ)と一緒にこれをしたいな」と思っていただけたら目標を達成しやすくなります。
一番頑張るのはご利用者様です。私たちスタッフがいくら意気込んでも、ご本人様が本気にならないと意味がないんですよね。

人生の先輩であり同じ目標に向かう仲間であるご利用者様

自立支援介護を継続するには、日々「できる」を積み重ねていくことが大切です。

緻密な計画を練っても、実際には週3回デイサービスに来るだけではなかなか変わらないものです。
そのため、ご利用者様には日常生活を変えていただくことが大切です。

「自立支援介護」「介護度改善」と一言で言うのは簡単ですが、実際には必要な工程がたくさんあります。
行動の数はもちろんですし、デリケートなことへの配慮も必要です。

ご本人も飽きてしまう中で、私たちは目標を見失わないようにずっと伴走し続けます。
たとえば、私たちもトレーニングジムに3カ月通ったら飽きることもありますよね。
そこで、消えそうなモチベーションの灯を吹き返すのが私たちの仕事です。

時には、熱中症に危機感のないご利用者様に対して「命が危ないですよ!」と厳しく伝えたり、「魔法みたいによくなるわけではないですから、コツコツ頑張りましょうね!」と繰り返すこともあります。

ポラリスでは、デイサービスに来ていただくことが目的ではないのです。
ご利用者様を人生の先輩として尊重しながら、その場だけの楽しさではなく、耳が痛いこともお伝えしながら「一緒にやっていきましょうね」と仲間意識をもってやっています。

さまざまなご利用者様がいらっしゃいますが、ポラリスを選ばれたのは元気になりたいからです。
体がつらいなかでも体調管理ノートに記録をつけてくださったり、孫のような年齢の私たちの話を聞いてくださったり、本当に感謝しています。
ご自分と向き合いながら一生懸命頑張ってくださるご利用者様には、私も全力で応援したいです。

ご利用者様のツボを探ることが効果的なサポートにつながる

仕事の中で大切にしていることは、とにかくご利用者様を深く知ることです。

ポラリスにいらっしゃるまでの生活歴、たとえば、お仕事や価値観は人それぞれ異なります。
ご利用者様が100名いらっしゃれば100通りの人生があります。
同じように、ご利用者様とのコミュニケーションやサポートの方法もその数だけ存在します。

コミュニケーションの中では、相手の表情が変わる瞬間に注目していますね。
不安そうな表情や明るい表情など、その方の雰囲気が変わる時がフックです。
「この方はどんな時に喜ぶのだろう?」というポイントを常に探っています。

コミュニケーションを続けることで、最初は言葉を発することも難しかった方が、最終的に笑ったり冗談を言ったりされるようになりました。
生活環境だけでなく、その方ご自身の様子も変化していきます。

自立支援介護には正解がないので、自分で学ぶのも、後輩に伝えるのも大変です。
「どうやったらできるか」は一言では教えにくいところですが、「私だったらこんなふうにお声がけをするかな」と一緒に考えたり「このご利用者様にはこのような背景があるから、○○に絡めた言葉で例えると伝わりやすいかもね」と理由を説明したりするようにしています。

また、介護は人と人とのコミュニケーションなので、ご利用者様とスタッフの性格の相性もあります。
「○○様はこういう経験をされた方だから、この話題はNGだよ」「○○様は思いきって懐に飛び込んでいったほうが受け入れてくださるよ」など、スタッフ間で日々情報共有をしていますよ。

自立支援介護でご利用者様の「人生の選択肢」を増やしたい

私が考える自立支援介護のいいところは、大きく2つあると思っています。

1つは、体が元気になったら人生の選択肢を増やせることです。
その方が持っている体の機能を最大限に活かせたら、心臓が止まる瞬間まで自分で選択できることが増えますよね。
「どこに行きたい」「何をしたい」「誰に会いたい」を自分で選択できない状態は、実際になってみると想像以上に苦しいことだと思います。
ポラリスでご利用者様の生活や表情が変わっていくのを毎日見ているので、選択肢が増えればその方の人生がより充実したものになると信じています。​

2つめは、これからの高齢化社会で、自分の身を自分で守れることです。
先行きの見えない社会の中で、できるだけ健康でいることが自分自身を守ることにつながるのではという気持ちがあります。
ご利用者様はもちろん、私自身にも当てはまることだと思います。

現在の目標は、ポラリスの自立支援介護を高石市をはじめとする南大阪全体に広めることです。
ご利用者様には一日も長く元気な状態で、ご自分の人生を楽しんでいただきたいですね!

まとめ

自分に合った自立支援介護の仕事は、大変なことも楽しいこともたくさんあると語る藤原さん。
日頃のご活躍やご利用者様のお声から、相手の目線に立ったコミュニケーションから信頼関係を築かれる様子が伝わってきました。

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